2025年4月5日に静岡県立静岡がんセンター支持療法センター長兼呼吸器内科医長の内藤 立暁先生が会長をされた表記学術講演会が静岡県沼津市で開催されました。
同学会について2014年4月に発足した前身の日本サルコペニア・悪液質・消耗性疾患研究会(JSCW)は、高齢者医療におけるサルコペニア・カヘキシア対策の喫緊の課題に応えるべく、基礎研究者と臨床家が分野を超えて連携し、知見を深めるための場であり今回の学会ではテーマが「カヘキシアの早期発見に挑む – At Risk of Cachexia」 でありました。現在の「前悪液質(プレカヘキシア)」の臨床像は曖昧で、明確な診断基準も確立されていません。そこで同学会では、カヘキシア発症前に存在する潜在的なリスクを評価することで、カヘキシアを早期に診断し、早期治療につなげることが可能になると考えられこの概念を「At risk of cachexia」と定義し、リスク評価の標準化に向けた取り組みを進めています。
今回はの学会では「Cachexiaを早期発見するには?」、「カヘキシアの早期からの多職種医療の可能性」、「老年医学におけるCachexia at Risk」、「カヘキシアの早期診断と創薬のバイオマーカー」、「がん悪液質の治療最前線」などがセッションとして報告され活発な議論がされていました。
当科からは今井が参加し「非小細胞肺がん患者に対するカルボプラチン+パクリタキセル/nab-パクリタキセル+ペムブロリズマブ併用療法における栄養関連指数に関する予後因子の検討」を発表いたしました。
数多くの発表の中で優秀ポスター賞4演題に選出されました。


内容の概略は以下の通りです。
【目的】
カルボプラチン+パクリタキセル/nab-パクリタキセル+ペムブロリズマブ併用療法は、進行NSCLCの有効な一次治療である。しかし、同併用療法の予後予測因子ははっきりしていない。今回、Glasgow Prognostic Score (GPS), neutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR), Body mass index (BMI), platelet-to-lymphocyte ratio (PLR), Prognostic Nutrition Index (PNI)の同療法の予後予測因子としての意義を検討した。
【方法】
2018年12月から2020年12月の間、13施設で同療法にて一次治療を受けた進行NSCLC患者の有効性に関してGPS, NLR, BMI, PLRおよびPNIについて後方視的に検討した。
【結果】
年齢中央値は69歳(範囲:25~83歳)、男性/女性:121/23例、PS 0/1/2/≧3:23/103/11/7例、病期Ⅲ/Ⅳ/術後再発/化学放射線療法後再発:26/100/15/3例、扁平上皮癌/その他:120/24例、PD-L1 TPS <1/1-49/≧50/不明:31/64/35/14例であった。奏効割合、無増悪生存期間(PFS)中央値、全生存期間(OS)中央値はそれぞれ63.1% (95% CI: 55.0–70.6)、7.3か月 (95% CI: 5.3–9.4)、16.5か月 (95% CI: 13.9–22.1)であった。OSに関して単変量解析ではNLRとPNIは有意差を認め、多変量解析ではPNIのみが独立した予後因子であった。
【結論】
PNIは一次治療において同併用療法で治療された進行NSCLC患者のOSに対する予後予測因子として有用であった。
日本及び世界に対して臨床と研究を行っていらっしゃる先生方と直接お会いしてお話しすることが出来て、今後の活動に向けて大きなインパクトになりました。
(文責 今井久雄)