2025年5月17日から18日にかけてに和歌山県立医科大学内科学第三講座 教授の山本 信之先生が会長をされた表記学術講演会が和歌山県和歌山市で開催されました。
当科からは今井が参加し「高齢者非小細胞肺癌に対する初回治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法の効果および安全性の検討」を発表いたしました。
開催日:2025年5月17日(土)~18日(日)
開催地:和歌山県
テーマ:「最高のがんサポーティブケアを目指して beyond evidence」
1. 学会概要
第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会は、がん医療における「支持療法(サポーティブケア)」のさらなる発展と実践を目的として、2025年5月17日~18日に和歌山県にて開催されました。本学会は、日本で唯一、サポーティブケアに多職種で取り組む学会であり、その構成は医師と非医師がほぼ同数という特徴を持っています。
第4期がん対策推進基本計画(2023年3月閣議決定)でも、「支持療法の推進」ががん医療提供体制の中で明示されており、サポーティブケアの果たす役割は今後ますます重要になると考えられます。
本大会では、科学的エビデンスが未確立の分野だからこそ重要となる「Beyond Evidence」という視点のもと、国際的連携(MASCC、Korean Academy との合同企画)や行政・自治体との協働、患者連携を含む幅広いセッションが企画されました。17の部会、11のワーキンググループから多様なプログラムが実施され、がん医療の現場に直結する教育セッションや症例検討、研究報告が多数発表されました。
2. 所感
多職種が一堂に会する本学会は、臓器横断的、職種横断的な意見交換が非常に活発で、今後のがん医療の質の向上に直結する多くの知見が得られました。特に、患者や家族の生活の質(QOL)を支える実践において、医療者間の連携だけでなく、制度的支援や社会資源の統合的活用の重要性を再認識しました。
また、国際的な情報発信を視野に入れたセッションも多く、日本発のサポーティブケアの強みや課題を世界と共有していくことの意義を強く感じました。
3. 発表演題の概要
【演題名】
高齢者非小細胞肺癌に対する初回治療におけるニボルマブ+イピリムマブ併用療法の効果および安全性の検討
【背景】
ニボルマブ+イピリムマブ併用療法(Nivo+ipi)はドライバー遺伝子変異/転座陰性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療選択肢の一つである。しかし、実臨床下における高齢者NSCLCに対するNivo+ipiの効果および安全性は十分に検討されていない。
【目的】
75歳以上の高齢NSCLC患者に対する初回治療におけるNivo+ipiの有効性と安全性を評価する。【方法】2020年12月から2022年11月に国内4施設でNSCLCに対して初回治療としてNivo+ipiを受けた75歳以上の患者57例を後方視的に効果および安全性を評価した。
【結果】
年齢中央値は78歳(範囲:75~86歳)、男性/女性:52/5例、PS 0/1/2:21/30/6例、病期III/IV/術後再発:3/33/21例、腺癌/扁平上皮癌/その他:37/15/5例、PD-L1 TPS <1/1-49/≧50/不明:32/18/5/2例であった。Nivo+ipi投与サイクル中央値は2サイクル(範囲:1~20)であった。奏効割合、無増悪生存期間 (PFS)中央値、全生存期間(OS)中央値はそれぞれ42.1%、7.1ヵ月、14.1ヵ月であった。グレード3以上の主な有害事象は、肺臓炎7例(12.2%)、AST上昇4例(7.0%)、ALT上昇4例(7.0%)、副腎機能不全3例(5.3%)、大腸炎3例(5.3%)であった。治療関連死はみられなかった。治療関連有害事象を認めた患者と認められなかった患者のPFS中央値は11.7ヵ月と 2.8ヵ月(log-rank, p=0.0001)およびOS中央値は20.4ヵ月と9.0ヵ月(log-rank, p=0.0132)であり、それぞれ治療関連有害事象を認めた患者が有意に長かった。
【結論】
Nivo+ipiは高齢者NSCLCにおいて肺臓炎が多い傾向にあったが、Gr.1-2が多くステロイドにより管理可能であった。また、免疫関連有害事象の発生は臨床的奏効と関連していた。Nivo+ipiは、高齢者NSCLCに対しても有効性と有害事象のバランスが良好であり、有望な選択肢であると考えられた。